【桐生祥秀選手インタビュー】Part.2「on the track-3レースに見る、理想の走りの断片-」

DSC09473

ご自身に走りを分析いただく「on the track」。2015年テキサスリレーの9.87(+3.3)、布勢スプリントの10.09(+0.3)、そして2013年織田記念の10.01(+0.9)3つのレースを振り返っていただきます。映像で振り返ることはしていないという桐生選手に、あえて解説をお願いしました。完璧なレースはまだできていない、とのことですが、それぞれのレースから、追い求める走りの姿が少しずつ見えてきます。


 

普段、映像は振返らない

ーご自身に3つのレースを分析いただきたいと思います。さきほどまでのお話を聞いていると、あまり積極的に振り返られることはないでしょうか。

 
桐生選手
僕は振り返らないですね。したほうがいいかもよくわからなくて。個人的に陸上の動画を観ないというのもあるんですけど。
ーご自身のレース以外、例えば昨年の世界選手権の映像などもご覧にはなっていないんですか?
 
桐生選手
練習終わって寮に帰ると、陸上の話は極力しません。
ートレーニングとオフの場面はパキっと切り分けてらっしゃるんですね。
 
桐生選手
そこはキッパリ切り分けていますね。

テキサスリレーの9.87(+3.3)

ーでは、レースを振り返ってみたいと思います。まずはテキサスリレーのレース。最初から前に出て、タイムは衝撃の9.87(+3.3)。どのように振り返ってらっしゃいますか。

 
桐生選手
このレースもコーチと試合前に話して、僕と一致していたのは30mまでしっかりいけばあとは、そのまま流れに任せてという感じでした。その点では、30mまではけっこう順調にいけたと思いますね。
ースタートの局面、非常に納得していらっしゃるかと想像します。
 
桐生選手
そうですね、今観たらもうちょっと重心を落としても良かったかな、っていうのはあるんですけど。でも、これは風とか関係なく、良いレースだったなと思っています。
ー前のシーズンよりも腰の位置が高くなっているという印象を受けました。前の冬季に取り組まれたことなんでしょうか。
 
桐生選手
そうですね、ほんといい感じに腰が動けているなと。(一瞬間を置いて)いや、でも最後がやっぱり…、なんていうんですかね、ラスト10m20mを、もっとグッと行きたいんですよ。ちょっと失速じゃないですけど、やっぱり力みが。隣の外国人選手が大きかったりして(気になった)。20-30mは自分でもいい感じでいっているんですけど
ー特に、前半5,6歩くらいでしょうか。
 
桐生選手
起き上がるタイミングも、けっこう好きなんですけどね。
ー隣には、ライアン・ベイリー選手(アメリカ・自己ベスト9.88)がいました。
 
桐生選手
僕知らなかったんですよ。コーチも知らなくて、レースから帰ってきてから記者の人から言われて。レースの時は「なんかめっちゃでかい人いるな」って笑。
ーロンドン五輪4×100mのアンカーでしたね笑。
 
桐生選手
(画面に見入って)やっぱりこの辺(70-80m)からですね、この辺からどんどん詰められているじゃないですか。腕振りも小さくなってしまったり、ここからもっと修正していく部分です。
ー腕振りが小さくなったのは、周りを意識してしまったんでしょうか。
 
桐生選手
それもありますし、抱え込んじゃったというのもあります。
ーシーズン最初のレースですが、シーズンを通して解消していこうと考えてらしたんでしょうか。
 
桐生選手
そうですね。このレースの前に大学の合宿でグアムに行ったんです。そこで9秒台を手動で2回出して、200mも19秒台を出していたので、9.9秒台くらいはいけるなと思っていました。8台はビックリしましたけど。タイムとして、追い風+3.3で9秒8だったら、そんなものか、という感じでしたね。大体練習よりも試合のほうが速いので。
ーお話を聞いていると、9秒台をあまり大きなものと捉えすぎていないのでは、と感じます。
桐生選手
そうですね、自分に賭けているというか。どういう自信かわからないですけど、9秒台が出ないというのもわからないです。なにかのタイミングで出るんじゃないかという感じですね。

 

布勢スプリントの10.09(+0.3)

ーそれでは、シーズンベスト10.09(+0.3)を出された布勢スプリントのレースを観ていただきます。スタートから出ていますね。

 
桐生選手
スタートの部分で歩数がちょっと多いですね。
ーこの時の歩数は本来目指しているものより多かったと。
 
桐生選手
もうちょっと脚を前に進めたいというのもあります。回転に頼ったレースで、後半にあまり走りが変わらないというのは、伸びが無いです。この走りを観てどこを変えようというのが無くて、トータルとしてあまり好きじゃないレースです。前半普通だったら、30mまでしっかり行ったら後半で直そうとかあるんですけど、これだと、全部が平均的すぎて。ここも、そのままスッと流れている感じがします。
ー60mあたりですね。
 
桐生選手
上がりもせず、下がりもせずに、そのままスッといって。
ー最後も余裕を持って、駆け抜けるようにゴールラインを切っていますよね。
 
桐生選手
タイム観てこうだったのも(首をかしげたのも)「アーッ!!」ってなってるんですよ笑。全然思っていたタイムじゃなかったので。
ーこの時のレースは、自己ベストを超えるような目標を持ってらした、と。
 
桐生選手
はい、今観たら、脚も後ろで回っています。テキサスの時はもっと腰が高く、前の方で回っていた気がするんですけど、この時は回転に頼りすぎています。
ーしかし、非常に早い回転で、以前より前の方でさばく動きに変わってらっしゃいますよね。高校時代からのものすごいピッチは、トレーニングで身につけたものなのか、先天的なものなのか、どのように考えてらっしゃいますか。
 
桐生選手
トレーニングもありますね。ミニハードルを中学校から高校とずっとやってきた中で、できてきたんだと思います。
ーピッチを上げる際にミニハードルは非常に有効なんでしょうか。どういったトレーニングをされてらっしゃるんですか。
 
桐生選手
1.5m、1.0m間隔で、大きく動いたり。中高生はヒザ下だけで、ミニハードルを越えようとしがちだと思うんですけど、結局ヒザ下だけで動いてしまうと意味が無いので、お尻から動くっていうことを僕は意識づけしています。膝下がどれだけ動こうと、大きいここ(腰から臀部)が動かないといけないので、方法は考えながらやっていますね。

織田記念の10.01(+0.9)

ー続いて、2014年織田記念での10.01(+0.9)のレースです。今見るとどこが改善点、どこが求められている走りに近いかというのを教えてもらえますか

 
桐生選手
中盤が良かったですね。スタートはほどほどだと思うんですけど、中盤の乗りがやっぱりいいなと思います。後半ばらけてしまったというのはありますけれども。しっかり上体が低く出れているのもいいと思います。
ー15-20mでグッと前に出ますよね。
 
桐生選手
はい、顔を上げた瞬間にギアが変わるので、いまならもっと筋肉がついていますし、もっといけると思いますね。
ーこの当時の走りは、今より重心が少し低い位置にあるように思います。どういった意識で、現在は少し腰の位置が高くなってきているんでしょうか。
 
桐生選手
どちらかというと、腰を使って走る、というイメージなので、どのタイミングで腰が低くなっているか高くなっているか、というのはビデオを観ないとわからないんです。今日も練習してて、今の走りが腰が高いか低いか、というのはわからないですね。
ー結果としてそうなっているということで、ご自身の走りを追求された結果そのときそのときで…
 
桐生選手
やっぱり練習すると体が変わると思うので、毎回毎回、同じ体で同じ動きではおもしろくないので、臨機応変に変えていきたいです。

タータンと距離を置く冬季トレーニング

ー現在の冬季の取り組みとしては、どんな点をレベルアップしたいと取り組んでらっしゃるんですか。
 
桐生選手
去年はバウンディングとかホッピングとかを全然メニューに入れていなくて。筋肉をつけて、動きにつながるようなトレーニングをしていったんですけど、今年はジャンプ系で一発の強さを上げたりしていっています。
ー一発の強さというのは、ストライドにつながっていくようなトレーニングなんでしょうか。
 
桐生選手
結果的にストライドが3cmでも5cmでもいいので、伸びればいいなという感じですね。
ー大きく取り組みを変えるというよりかは、これまでの延長戦の中で課題をクリアしていくような。
 
桐生選手
そうですね、延長線上でもありますし、大きく変えた点としては、タータン練習を冬季中は走らなくなりました。
ーでは、ジャンプ系の練習というのは芝生の上で。
 
桐生選手
この冬季でタータン走ったの5回あるかな、っていうくらいなんですよ
ー感覚的な理由なのか、身体への負担なのか。
 
桐生選手
負担もありますし、タータンでずっと走ると、さっきも言ったように、0~100mの距離がわかってしまう。中学校高校では試合で競技場に行って、スパイク履いて、「ようやく速く走れる」みたいな気持ちがあるじゃないですか。で、スタート地点から100m先を見て、「今日はここを走ろう」と気持ちが上がるんですけど、ずっとタータンで練習していると、このくらい走れば100mゴールできるって、年間300日以上走っていたらわかってしまう。そうなると、布勢スプリントのように、だいたいこのくらい走れば100mは走れる、っていう感覚が勝手に体についてしまうと思うんです。
ー求められている部分とは違うわけですね。荒々しい走り、身体の中から湧き上がってくるものを追求するようになってくると
 
桐生選手
けっこう気合で試合の結果が変わるんです。試合の走りもスタートダッシュも、気合が入るか入らないかで、全く違います。
ー先ほど、大学1年時の関東インカレのお話がありました。決勝まではどこかスイッチが入っていなかったようだったのが、決勝ではオンになった、と。
 
桐生選手
テキサスの時のように、海外の雰囲気にあわせてテンション上がったりします。
ー海外の雰囲気、ということですが、海外のレースに対して、得意不得意という意識はありますか。
 
桐生選手
そうですね、速い人と競うのはおもしろいです。日本のレースが決しておもしろくないわけじゃないですけど、やっぱり海外いくと雰囲気違うのが楽しいですね。
ー観客席の盛り上がりだとか。
桐生選手
アメリカとか行くと、全然違いますね。それを感じてしまうと、楽しいなって思いますね。
ー昨年、北京の世界選手権の会場はすごい盛り上がりでしたが、桐生選手は大舞台でこそ力を発揮されるんですね。
 
桐生選手
むしろ、発揮しないと、という感じです。最終的な目標は、世界陸上、オリンピックでファイナルに残って勝負する、ということです。2020年には東京オリンピックが開かれますよね、普通だったら日本でオリンピックが開かれる確率なんて殆ど無いじゃないですか。その中でトップで走ることが目標なので、世界の雰囲気を感じていろいろ転戦したいな、と思ってます。
ー2016年シーズンはリオがありますけども、海外での場数を踏まれていく予定なんでしょうか。
 
桐生選手
海外遠征も考えています。
ーご自身としては、海外レースはむしろ得意で好きなんでしょうか。
 
桐生選手
競技場に行ったら試合に集中はするんですけど、空いた時間で街を観光するのが好きなんです。行ったことない場所に行くのってやっぱり楽しいですよね。
ー国内でも海外でも、いろんな場所でレースする喜びが、結果につながっている部分もあるのかもしれないと感じました。
 
桐生選手
そうですね。遠征が苦手とは、あまり思ったことないです。

桐生選手は、布勢スプリントでの10.09での走りにも、全く満足していません。それはタイム以上に、自分の求める走りではなかったから、という強いメッセージを感じました。メンタル面でも大きく結果が変わってくるということからも、大舞台、勝負がかかった場面でこそ、桐生選手のギアがマックスに入る瞬間が来るのだと感じました。

Part.3は、普段着の桐生選手に迫る「off the track」。桐生選手が節目節目に、買うと決めているものとはー。お楽しみに!




SNSでのシェアはこちらから

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です