【竹田一平選手】インタビューPart.2 -点と点が、一つの線に。-

バージョン 2

竹田選手に迫るインタビューPart.2は、大学入学後の劇的な成長の秘密に迫ります。在籍する中央大学は、2010年代の日本スプリント界のリーダー。ハイレベルなトレーニングと、自身の競技感がマッチしたことに成長の要因があることが見えてきます。


-中央大学という環境で、大きく成長できた要因を教えていただけますか。

竹田選手
高校時代は、同じレベルで競うことがなかなかできなかったんですけど、その分自分一人でやることが多かったので、すごく考えてやっていたんですよ。高校の仲間には失礼な言い方なんですが…。考えて考えて考えて、と。それを持って中大に入学したら、競うなんておこがましいほどの人たちがたくさんいる状態で。高校時代の考えを持ったまま、競う練習ができて、それがハマったんだと思っています。

-ハマり始めたのは、いつからなんでしょうか。

竹田選手
同期の長谷(伸之助)くんが、基本を教えてくれたんです。足さばきとか、基本動作を教えてくれてからですね。基本に忠実に、何回も繰り返すのが大事なんだなと気づいて、基本へ基本へと立ち返るようになっていきました。
速くなった要因はなんですか、と聞かれたら高校の時は答えられなかったと思うんですけど、今なら答えられます。高校までは、答えられないレベルの練習しかできていなくて、意識もその程度でしかなかった。それが長谷くんから教えられた基本に立ち返るようになってから、根拠ある成長の仕方がわかってきました。

-足さばきの他に、高校時代に知らなかった技術としてどんなことを大学で学んだんでしょうか。

竹田選手
足さばきが8割で、他にウェイトのやり方等ですね。最近、腰の使い方がわかるようになってきました。股関節が硬いというのは高校の時から気づいていたんですけど、目をつぶって取り組みが甘かった部分でした。それを、冬季の後半くらいから真剣に取り組むようになったら、腰も使えるようになって。今も続けています。

-足から動かすのではなく、骨盤から動かしてより大きなストライドを獲得する動き、に繋がっていくのでしょうか。

竹田選手
そういう感じですね。肩甲骨を動かす補強とかは高校時代からやっていたんですが、なかなか繋げられなくて、そうした活かせなかったガラクタみたいなものがたくさんあったんです。それを大1の冬に全部繋げられたという感じですね。あの時やっておいてよかった、あのガラクタは無駄じゃなかったと思いました。股関節を動かすために肩甲骨も使うことになったように、これまでバラバラだった点と点が、ちゃんと繋がったのが大1の冬だと思っています。

-冬季に特に大きく成長されてらっしゃるんですかね。

竹田選手
冬季練習も中高とスタンスが変わっていなくて、先頭で走りたいんですよね。速い選手がたくさんいますけど、それでも圧倒的な負けはしたくなくて。
-サッカーをやっていた当時は、譲ってしまう部分が向いていなかったとお話されていましたが、こと走ることになると、そこは譲れない部分が出てくるんですね。
竹田選手
電車の乗換でも負けたくないです(笑)。先頭で行きたいので。ボールは譲るんですけど、ポジションは譲らない、というのがあって。
-トップ選手に囲まれた環境で、気後れしてしまうことはありませんでしたか。
竹田選手
それは常にありました。「絶対に無理だ」と。それで悔しい思いをけっこうしたんです。最後は、結局記録で返すしかないじゃないですか。切り替えるのに、半年かかりました。「無理だ、追いつけるわけないだろ」、と思っていましたね。リレーメンバーにはもちろん入れないし、出れる試合は記録会ばかりだし。それでも冬季になったらいつも通りの(自分のスタイル)になって、一本一本考えるのが普通になっているんですよね。それが普通になった、高校時代の自分には感謝しています。
-考えるのは、走っている時なんでしょうか、走り終わってからその走りに考えを向けるのでしょうか。どういった思考の働かせ方なんでしょうか。
竹田選手
無意識にやってるんです。自分の強みだと思っています。たくさんの点をつなげる何かを、幹として自分では持っていて。走り終わって、「あーあの点がダメだったからうまくいかなかったんだ」ということがサッと振り返られます。いろんな人ができていることかもしれないですけど、だからといって強みにしないと自信がなくなっちゃうので、自分の強みと思ってやっています。
-中央大学では、共通のメニューと自主性とのバランスをどうとっているんでしょうか。
竹田選手
冬季はメニューが出るんですが、シーズン中は出ません。自分にとっては、高校時代とほとんど変わらないことです。
大1の時は、高校時代との違いにカルチャーショックがありました。一本一本の質が上がるんですよ。「え、こんなに少ないの?」と思うんですけど、いざ始めるとめちゃくちゃきつい。大1のはじめは自分のやり方が通用しなくてシッチャカメッチャカでしたが、今振り返れば、それも無駄じゃなかったと思っています。
-ウェイトについてもお聞きしたいと思います。高校時代と体つきが全く違うという印象があるんですけど、ウェイトの成果は科学的な計測結果やご自身の感覚で、どのように現れているんでしょうか。
竹田選手
単純にパワーはついたんですけど、ウェイトはそこまでやっていないです。クリーンやスクワットのやり方がようやくわかったくらいで、それまではほんとにゼロでした。
-大学1年当時ですね。
竹田選手
ウェイトをバリバリやっている感じではないです。大1の冬は筋肉でどうにかするのではなく、やり方でどうにかしたくて。いかに力をつかわずに前に進むかをずっと考えていて。飯塚(翔太・ミズノトラッククラブ)さんとかそんな感じしませんか?かっこいいですよね。憧れています。
-ウェイトも基礎部分だけで。
竹田選手
そろそろやったほうが良いかとも思うんですけど、今の走りでどこまでいけるか、という想いがあります。走り方の効率が良ければもっと速くいけますし、足を踏んでバン!と大きな音がしたら、力が音のエネルギーで消えているんだな、変換効率が悪いなと考えます。うまい走りをするのが第一優先ですね。
-ウェイトを重点的にやられたことが、成長の一番の要因ではないんですね。
竹田選手
今はそれに取り組む段階じゃないと思っています。パワーをつけることも大事でやっていますが、メインにしない理由がちゃんとあります。今はそのステージじゃないということです。まだまだ走りが非効率的ですし、そんな段階で筋肉をつけても意味ないと考えています。
-効率的な走りを身につけてから、その走りの効率性を最大化できるトレーニングをこれからやっていこう、と。
竹田選手
数打って何個か当たる、というのが好きじゃなくて、必要最低限な筋肉しか付けたくないんです。とりあえず筋力をつける人もいると思うんですけど、とりあえずつけた結果どれが効いているかわからない、なんて状態にはどうしてもなりたくありません。自分は実家からの通いで、時間がないのもあって。
-時間がないというのは、通学時間がかかっていると!
竹田選手
片道2時間くらいかかるんです。3時間位の限られた練習時間で、どれだけのことを効率的にできるか考えています。

-高3時のインターハイでは、メンタル面に課題があって悔しい結果でした。それが今年の水戸国際で、サニブラウン選手に勝利。成長を実感されたんじゃないでしょうか。
竹田選手
中大では、スタート練習を本番に近い形でやります。そのスタート練習より高い水準のレースってなかなかないんですよね。スタートが怖くなくなりました。あと、アジアジュニアを経て、100mにようやく慣れてきました。それまでは関東インカレみたいになっちゃっていたんですけど、いまはどうすればいいか感覚的にわかっているので。
 -関東インカレでは、なにが起きていたのでしょうか。
竹田選手
関東インカレの準決勝は、「(同じ組に)大瀬戸さんだ!」と思って(笑)。憧れの人がたくさんいて、ファンみたいな感じでした。
監督やコーチ、いろんな人に言われたんですけど、自分の実力に心がついていっていないって。「まだまだですよ、一発屋なんで…」みたいな、弱いメンタルがあのレースでは出てしまいました。それと、「どうせ大丈夫」みたいな慢心もあって。
でも得るものが大きかったんです。関東インカレで良かった、アジアジュニアじゃなくて良かったなって思っています。
-アジアジュニアは初めての国際大会でした。実力は発揮しきれたと。
竹田選手
普段通りでした。高揚感は水戸よりは少なかったんじゃないかなと思います。タイムはそんなに良くなくて、決勝が10.41。風速が出ていませんでしたし、予選は手動のタイムでした(笑)。それなら順位を狙っていこう、と。”アジアチャンピオン”と2位とはやっぱり雲泥の差じゃないですか。1位を狙っていたんですけど、(敗れたのは)実力差かなと思っています。
-そこでの学びも大きな経験になっているんじゃないでしょうか。
竹田選手
最近は失敗にくよくよしなくなって、すぐ切り替えられるようになりました。先があるから大丈夫とは思っていないですね。一本一本を大事にしています。市内のどんな小さい大会でも、国外の大会でも集中力は変わらないだろうなと思っていて、それくらい集中して走れると思います。失敗したのが、本当に関東インカレでよかったです。あの日は、本当に走れなくて。その割にはタイムも出ているという感じでした。
-調子自体、上がっていなかったんでしょうか。
竹田選手
ダメダメでしたね。「調子悪かったです」と言うと言い訳っぽくて良くないんですが、でもほんと悪いなりにタイムが出て。それでちょっと慢心したんだと思います。でもそれも克服して、技術的な面も克服できて。今後のために本当にいい試合になったなと思っています。

 トップスプリンターが揃う中央大学に飛び込んだ竹田選手。高校時代の一つ一つの取り組みが繋がった時、覚醒への道が始まりました。そうとは知らずにおいてきた点と点とが、線につながっていった大1シーズン。現在はより自覚的に点を置き、線となっていく道筋が見えているのだと感じました。
Part.3「on the track」では、水戸国際をはじめ、エポックになるレース動画を振り返りながら、ご自身に解説していただきます。お楽しみに!




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